最近おもしろい本を読みました。
15歳から19歳までの10代に5種類の調査を行い、その分析レポートです。 [10代の意識と行動に関する調査] [街頭インタビュー調査] [携帯電話メール調査] [10代一言調査] [生活定2000・2002・2004] これらのデータを元に「今の10代はこうではないか」と特徴を説明しているのですが、その説明がとてもおもしろい。読んでいて、「なるほど」「そう捉えるのか」「そんなもんかな」などいろいろ考えさせられました。 以下、私がユニーク思ったところの抜書きです。 (本は女の子、男が子は半分ずつページを占めています。ここでは女の子の部分のみ紹介します) あとは、本を丸ごと読むと「10代通」になれるかも。 『10代のぜんぶ』 ポプラ社 2005年1月発行、本体1300円 博報堂生活総合研究所 中村恭子 原田曜平 「あとがき」にあるこの言葉は本文を読んだあとでしたので、おもわずうなってしまいました。 「いつの時代も、10代は時代を映す鏡である。その時代の悪い面も綺麗に映し出す。しかし同時に、彼らはその時代に適合する力を最も持っている生き物でもあるのだ。むしろ、新しい時代に対応できていないことに気づかずに、「失われた10年」を過ごした我々大人たちこそ懸念すべき生き物なのかもしれない」 ------- 女の子 第1章 夢見るものは馬鹿をみる~10代の女の子が安定志向になる理由 ■理想は「ほどほどの生活」 ・ 10代の女の子の徹底した安定志向には驚かされることが多い。 ・ 不満を不満として表出させることなく、「まあ、こんなもんでしょ」と怒りとも悲しみともつかない「諦め」をみせる。 ・ 彼女たちからは悲壮感はまったく感じられない。 ・ 一生懸命になっていることを人に察知されたくないし、何かに打ち込んだ末に失敗したらどんなに惨めか・・・・・・というところまで先回りして考えているのだ。 ・ 親の世代から見れば「ゼイタク」であっても、自分たちにとっては普通。 ・ 「宝くじで100万円あたったら何に使う?」と聞くと、なんと72.5%もが「貯金をする」と答えた。ついで多いのが「旅行」20.5%。 ・ 物質的に満たされている彼女たちにとって、お金は「何かあった時の備え」といった保険の要素が強い。 ・ 「安定」という言葉の裏に隠れているものーそれは、物による豊かさではなく、幸せを計る自分なりの尺度を持ちたいという願望なのではないだろうか。 ・ 彼女たちは、実に厳しく上の世代を見つめている。 ■「備えあれば憂いない」の、未来予想図 ・ 「30歳の自分」は、まだ見ぬ夫を中心に将来の職を見据える前者と、夫の収入に頼るリスクを回避しようと考える後者。どちらも家庭を基盤に自分の将来を予想しており、「経済的に安定した生活」を目標にしている。 ・ 彼女たちは、世間で言われる10代の価値や注目度に気づいている。若さというのは、アッと言う間になくなるものであることも知っているのだろう。 ・ 彼女たちが夢に見るのは「ほどほどに幸せな生活」である。現状を失うかもしれないリスキーな挑戦をするよりは、今のままの自分を維持することを重視する。 ・ 見方を変えると、足りないものを想起できないほど安定した生活をすでに与えられていることが、彼女たちが大きな夢を語れない原因、とも考えられる。 ・ 彼女たちは、つねに現実的かつ合理的な思考をもち、「やりたいこと」より「できること」を優先させる。 ・ 彼女たちにとっての「成功」は社会的な評価ではなく、「安定した生活」「愛する人」といった個人的な満足や充足を指している。 ・ 彼女たちは、人が自分の周りから去ることを極端に恐れる傾向が強い。 ■サラリーマンより職人主義 ・ 目的意識のしっかりしているフリーターは、肩書きだけの社員より尊敬できる、と考えているようだ。 ・ 安定を一番に考えながらも、職人やアーティストを尊敬しているあたり、心の底では「自分にしかできないこと」(個性的・独創的であるという意味で)を見つけたいと願っているのではないだろうか。 ・ 愛と金。それぞれ対極にあるとされがちな二つが上位にきている。(「人生にとって一番大切だと思うモノは?」) 第2章 言わない、責めない、争わない~批判を避ける10代女の子 ■ノリがいいのが命綱 ・ 「笑うタイミングさえ、いつもドキドキしながらうかがっていた。ウソっぽくならないか気にしながら笑ってた。少しのタイミングのずれさえも許されない雰囲気だった」 ・ 嫌われる女の子の特徴は「周りの空気を読めない人」であるらしい。 ・ 彼女たちのコミュニケーションにおける巧みさは、集団の中で生き抜くための武器である。自分がどう思うかを伝えるより先に、その場の空気を円滑にすることに力を注がなくてはならない状況にいる10代女の子。彼女たちは大人の「社会」よりも、さらに互いが互いを制し合う「村」に生きているのかもしれない。 ・ 友人と一緒にいながら、その場にいない誰かとつながっている。リアルな世界で友達と行動を共にしながら、バーチャルなメールの世界で誰かとつながっているー彼女たちは幾重にも重なるコミュニケーション次元を使い分けることに慣れている。 ■悩みの出口は八方ふさがり ・ 彼女たちにとって「本音」は「自分勝手」と捉えられかねない危険要因なのだ。 ・ 親に対する敬意が薄く、友達感覚で親と付き合っている10代女の子は意外と多い。 ・ 「あなたと親の関係は?」との問いには、なんと89.5%が「良い」と答えている。 ・ 「言ったって変わらないでしょ」と彼女たちは淡々とした口調で言う。 ・ 「日本が好き」と答えた子は83.5%にものぼった。 ・ 第3章 近づきゃ不快、離れりゃ不安~10代女の子のコミュニケーションバランス ■肥大化するネットワーク ・ 彼女たちの会話を通して感じるのは、「悩んだ者は負け」という感覚である。「考えたって解決しない悩みは、考えるだけムダ」 ・ 最近の10代の女の子は「マジメ=うだつのあがらない人」という解釈をしている。彼女たちの言うまじめは、「まじめだけど、結局のところ損をする人」ということだ。 ■弱気はタブーの恋愛バトル ■10代女の子 ケータイのぜんぶ ・ 何を伝えるかよりも、どう伝えるか(文面だけでなく、見た目も含めて)によって10代女の子同士のキャラクターは決まる。 第4章 10代の生声を聞け~座談会から見えてきた10代のほんとう 女の子総論~不安を受け入れ、ポジティブな引き算思考で生き抜く10代女の子 (略)
by xiyuannei
| 2005-05-11 21:44
| 読書は他者の経験の共有
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