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音楽消費調査

若者の音楽消費調査の報告を聞いたのですが、その話がすごく刺激的で、変化している時代における音楽に対する若者のかかわりの在りようの一端がリアルにわかる内容でした。さすが大学の先生という感じです。

要約すると以下のような内容です。

1.研究の視点として消費者の3つの顔を抑えたい。それは消費者(Buyer)、支払者(Payer)、ユーザー(User)ある。ここで最近問題になるのは、支払い者としての消費者であり、音楽の入手方法の多様化のなかでダウンロードなどでお金を払わない消費者が増えている。

2.消費者の購買決定プロセスは問題認識、知名、想起、知覚、選好、行動、満足・不満足のプロセスであるが、知名・想起という情報探索および、行動という購買行動にポイントをあてて調査分析したい。

3.調査は4大学676人、フェイス項目・音楽の入手方法および聴き方に関する90項目の質問、回答方法は5段階のリカート尺度で数値

4.事前にグループインタビューして何が問題かを発見・整理した。1つは情報探索の段階から選択行動へ進まないケース(聴いた気になる、1曲を通して聴こうとしない、アルバム全曲を聴こうとしない、「この曲を知っている」は「1曲すべて」とは限らない)、2つには手段・目的連鎖(音楽を聴くことは歌手の世界観を感じる?アルバムを聴くのはアーティストの世界観を感じる?コミュニケーションアイテムとして話題のキーポイントを知る)などである。

5.音楽入手からセグメントしたら回答者のタイプは6つであり、正統派13%、セル&DL派8%、レンタル&友達は17%、友達派20%、ネット派14%、無関心派27%であった。「レンタル&友達派」が一番若者らしい行動で、彼らはCDをレンタルするが友達から借り、CD購入もする。

6.トレンド感度の分析も興味深いものでした。それぞれの派ごとに紹介していました。紙面の都合で「レンタル&友達派」だけにしますが、彼らは、音楽のヒットチャートをよく見ている、流行の曲を気にする、世間で評判の曲を入手して聴く、テレビ番組で聴いたのがきっかけで聴く曲がある、CDショップへは定期的に行くなどの特徴があり、それは「音楽に対する感度が高く、トレンドを気にする」「テレビで(たまたま)耳にした曲を、CDショップで視聴し、レンタルから友達から入手する」という行動をする。これはホント若者の音楽消費行動そのものである、という話でした。各タイプ(派)ごとにこのような分析を加えていましたが、なかなか説得力のある話で、隣に座っていた参加者はしきりにうなずいていました。

7.さらにユーザーの視聴行動を分析します。「レンタル&友達派」はお気に入りのマイベストCDやMDを作成する、アルバムを聴くときは聴きたい曲だけ聴く、好きな曲は自分で歌えるようにする、好きな曲は歌詞まで覚える、音楽を聴きながら歌詞に感情移入してしまう、音楽を聴くときは聴くことだけに集中するなどの特徴があり、「マイ・ベストの曲や歌詞を繰り返し集中して聴く」「アーティストの世界観というよりは、ディティールにこだわる(マクロよりミクロ)」。だから、このタイプはカラオケに行く人が多いとのことでした。(私はこのタイプですね)

8.あとおもしろかったのは、表舞台と裏舞台の話。表舞台のコンテンツのミクロ要素として、ストーリー、背景、小道具、舞台、メインキャスト、役割、台詞、サブキャスト、音楽、時間の長さなどがあり、裏舞台メイク、原作者、演技指導、製作費用などなどなどがある。コンテンツというとき、今、この表と裏の情報がそれぞれ重要な意味を持つ。

9.コンテンツ本体の利益の源泉は、現在作って世の中に出せば将来ビジネスになっていくものが多い。例えば、シリーズ化、バージョンアップ、リバイバル、リメイク、リミックス、マルチメディアなどで将来ビジネスになっていく。

これ以外ににも示唆に富んだ話がたくさん聴けましたが、マーケッティングをする学者の感度の良さに感心してしまいました。やはり仕事をするにはこのような仮説・調査・分析・検証・発表をしなければ・・・と参考になったのでした。

最後に話題提供していましたが、アップルコンピューターが「Goodbye MD」キャンペーンをしており、まさに今、音楽を聴く手段は大きく変わりつつあります。特にiPODというハードディスク型の音楽ドライブが出現してから、「音を貯める」「音楽を貯める」文化が出てきており、入手の仕方、聴き方にも何か変化が起きる時代に入るかも知れない状況です。それはどういう状況なのかまだ方向は見えていませんが・・・、何かが起きると予感せざるをえません。
by xiyuannei | 2004-11-10 06:27 | 数字からみる社会の断面
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