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はじめてのDVD制作

最近、DVD制作に関する仕事をしました。会社紹介を「英語版でNTSC版とPal版、時間は8~9分におさめる、動画と静止画を活用して動きのあるものにする、製作期間は実質2ケ月弱」という制約でおこないました。
いままで、雑誌・書籍の編集制作の経験はありますがDVDというデジタルものは初めてです。しかも英語版となると更に予測できない工程が出てきそうです。
結果は期日までに無事NTSC版とPAL版を作り終え海外出張代表団に手渡すことができました。「良いものが出来た」と評価をいただき、制作に関わったものとしてホッとしました。
一般的にDVD制作工程は、「企画・校正、画像制作、音声制作、オーサリング工程、プレス工程」といいます。始まる前は何をどうするのかピンと来ませんでしたが振り返ると「こういう作業を意味するのか」と納得。

1.制作意思の確認

そのDVDを本当に作る意思があるのかどうかは、制作体制をつくり、予算措置が重要です。今回は海外でのプレゼンとあわせてワークショップも開催することで例年とは異なる力の入れようでした。その一つにDVD制作もありました。ですから気合がはいりました。制作担当の窓口は私でしたが、国際G、外部の制作会社とのコラボでできたDVDでした。

2.最初が肝心

振り返ってみて、大切だったと思うことは次の3点です。
(1)まずは「シナリオありき」です。シナリオとナレーションを日本語と英語版の両方で確定しておくこと、これが最重要でした。
(2)動画と写真素材を集めておくことです。制作のチェック過程で、こういう画像はないか、これの方がいい等どんどん出てきます。画素数によっては使えないものもあり、素材集めは決定的に重要でした。
(3)第1回試写会からマスター版完成直前までの製作工程を十分とっておくことです。DVDの仕様を変更すると、画面の作りこみ、録音などやり直さなくてはなりません。時間がかかります。お金もかかります。

3.企画校正

(1)シナリオの起案・検討・確定は時間がかかりました。8~9分のDVD英語版となると、日本語のナレーションは約6分半で作成しなければなりません。英語に翻訳すると約30%、分量が長くなるからです。まずは、日本語原稿確定に時間がかかりました。事業概要を簡潔に説明するわけですが、何をどのようにどんな言葉で説明するのかという構成に時間がかかりそれから執筆です。初稿に加筆修正が入って戻ってくる、しかも関係部署の何人かに見てもらうとそれぞれが修正してくるので、まずはナレーション文案の確定に1カ月ほどかかりました。
最終確定し、それからその原稿の英訳です。英訳は、外部に依頼。出来上がった翻訳原稿を国際Gがチェック作業を行うので10日くらい必要だったでしょうか。従って、最初の日本語シナリオ起案から英訳確定まで約1ケ月半かかりました。
この作業を確実にやっておかないと、制作過程でブレが起こり、場合によってはシナリオおよびナレーション原稿の修正まで揺り戻しが起きてしまいます。今回はそのようなことはありませんでしたが、工程が詰まってきた段階で「揺り戻し」がでてくれば、確実に納期を守ることはできないでしょう。それくらいに、実際の制作工程は時間がかかります。

4.制作会社へのコンセプト説明と素材の提供

制作会社に日本語と英語のシナリオとナレーション、動画・静止画などの素材を渡したのは、納期の約40日前でした。「こういうものをつくりたい」と丁寧に説明し、制作会社は「わかりました。第1回試写会を10日後に行いましょう」と言って、持ち帰って画面制作の作業に入ります。
制作会社では、英語ナレーションを自前で録音しその音声に合わせながら画像を作成していきます。渡した動画、静止画の素材をパソコンで編集しながら画面をつくります。その過程ではグラフ、図なども作成します。
はじめてお付き合いする制作会社だったので、会社のミッション・ビジョン・事業の概要などを理解して実際に画像制作するのは大変だったろうと思います。
私が渡したものは「日本語・英語のシナリオ(ナレーション)、素材としての動画・写真、テロップの文書(日本語-英語)、写真キャプションの文書(日本語-英語)、図表(日本語-英語)、数表(日本語-英語)」でした。その後第1回試写版の制作までには何回も制作会社と連絡を取り合って、足りない画像の追加納品、図表・キャプションなどの追加納品を行いました。

5.第1回試写版はラフに、第2回試写版は完成度をあげて

さて、10日後の第1回試写には仮ナレーション(英語)にあわせて画像が動きます。これをトップ含め関係者に見ていただき、いろいろな改善点・変更点を出してもらいます。かなり出ました。それを全部項目ごとに整理して第2回試写までに作り込みを行います。この第2回試写会は納期との関係では「最後の修正」のチャンスくらいの位置づけです。従って極力完成度の高いものをつくりました。あとで振り返ると80%の出来でしょうか。第2回試写版では本番でナレーションする方(外国人)に読んでいただき、その音声ナレーションと第1回試写以降修正した画像を組みあわせて制作。この段階ではまだBGMは入っていません。

6.第2回試写版が出来てからが最後の詰めです。

第2回試写を見ていただき意見を出していただきました。さらに最後の詰めになっていくのですが、最終的には、第2回試写用のDVDと関連素材(紙ベース)を一式準備して、トップと実際にパソコンでコマを一つひとつ送りながら全面的に修正箇所の摘出を行いました。この摘出箇所の修正を数日で行い、再度、パソコンでDVDを動かして一つひとつ入念なチェックです。この「入念なチェック」の検討はそれぞれ3時間半ずつかかりました。この3時間半の検討は、準備するのに3時間半、検討結果を受けて修正用の素材集めと整理に3時間半かかります。今回はこれを2回おこなったのでこれだけで約20時間費やしました。たった9分のDVDですが、この具体的で緻密な作業が決定的に重要でした。しかも、責任ある方(今回はトップ)がジャッジしながら修正箇所を確定しないと、最終的にコンセプトが鮮明になったものができない可能性があることがわかりました。

7.画像の作りこみ

この検討結果を制作会社に知らせて、制作会社はその修正要求の仕様に基づいて9分の画像を全面的に見直し、修正していきます。この現場には私も2回行き、プログラマーが実際に画像を制作するプロセスに立ち会いました。私としては現場の実態がわかり勉強になりました。そしてその場で音と画面を見ながら、「こうして欲しい」「こうしたい」と要望して、即、修正してもらいます。この作業により、自分としては安心できる9分の画像が出来あがりました。

8.スタジオ入り

画像が完成すると、いよいよスタジオでナレーション録音とBGM挿入です。BGMは事前に10曲ほど試聴していますので、スタジオで画像にフィットするものを挿入していただきました。
このスタジオでの画像とナレーションとBGMの音あわせがけっこう大変な作業です。特にナレーションと映像がちょっとでもずれると、「違和感」につながります。

9.オーサリング

こうして、画像(動画、静止画・テロップ、キャプションなどのエンコードをしたもの)とナレーションおよびBGMを合わせる作業(この辺の作業をオーサリングといいますが)を行います。
この3点が合わさったものを見ると、英語のスペルミス、ナレーション音声のトーンのムラ、ナレーションと画像変化のズレなど細かいことがまだ気になります。それらの修正作業を行いますが、どこかでOK宣言をしなければなりません。この判断も重要でした。
マスター書き出し版を見て最終版に入ります。文字校正・色校正・写真差し替えなどをやり、マスター版の制作です。その数日後、またスタジオに行ってチャプターチェック、動作チェックを行ないます。こうしてマスター版が完成しました。後はプレスの工程に入ります。

10.プレス工程、出来上がり

先にジャケット・レベルなどのデザインはつくっておきます。プレスもDVDの場合は時間がかかるようで少なくとも3日間は必要でした。こうしてシナリオ確定まで1ケ月半、実際の制作に1ケ月半と結局3ケ月の仕事量になりました。自分にとってもいい仕事をさせてもらったと感謝しています。


追記
娘が大学で「メディアインフォメーション」を専攻していたので、卒業作品だと思いますが10分ほどの動画をみせて貰いました。見た時にはストーリーがわかりやすくなかなかいい作品だと思いました。シナリオづくり、素材作成、編集と作りこみなど話を聞きましたがが、私がつくるわけではないで「ふむふむ」という受けとめでした。しかし、今回、DVD制作に直面し、かなり大変な作業であることを実感。娘もそれなりにたいしたものです。
by xiyuannei | 2007-12-17 20:43 | 日常生活は発見がいっぱい
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